リトアニアとはどういう国?
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私は6月にバルト3国のリトアニアとラトビアを旅行しました。そこで、今回はリトアニアの鉄道紀行を書きます。ところで「リトアニア」と聞くと、ユダヤ人にビザを発行した外交官、杉原千畝を思い浮かべる方も多いでしょう。杉原千畝は1930年代末~40年代初頭にかけて、カウナスの領事館で働きました。この記事では、首都ヴィリニュスから列車に乗って、杉原千畝の足跡をたどってみましょう。
リトアニアはバルト3国のうち、一番南に位置する国です。面積は65,300キロ平方メートル(北海道の約80%)、人口は約285万人です。285万人のうち、大半を占めるのがバルト語派のリトアニア人です。1991年にソビエト連邦から独立しました。
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リトアニアの鉄道はロシアの影響を受けて、広軌(1,520mm)を採用しています。日本の新幹線は標準軌(1,435mm)なので、とても広く感じます。首都ヴィリニュスを中心に路線網が伸びており、ロシア、ベラルーシ、ポーランド方面行きの国際列車が運行されています。現在、ポーランドからバルト3国を経てフィンランドのヘルシンキに至る「Rail Baltica計画」が進められています。
チェコ製の近代的な車両に乗って
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2017年6月4日、ヴィリニュス駅からカウナス行きの普通電車に乗りました。ヴィリニュス駅のホームで待っていると、カウナスから3両編成の近郊電車がやって来ました。旧ソ連製の旧型車を予想していたので、いい意味で期待が裏切られました。この電車はEJ575系といい、チェコのシュコダ社で製造されました。近郊電車でありながら、最高速度は160kmにもなります。チェコはもちろん中東欧諸国に輸出され、近郊電車のエースとして活躍しています。
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車内は2階建てになっており、ボックスシートが並んでいます。車端部は観光客にも対応できるように荷物棚が設置されていました。驚いたのは車端にあるモニター。このモニターでは、電車が走っている場所が地図で表示されます。
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11時35分、カウナスに向けて電車は静かに走り出しました。3両編成と身軽なせいか、スピードは軽々と100kmを超えました。リトアニアは基本的に平原の国なので、あまりカーブはありません。景色は草地と木々が交互に入れ替わる感じ。速いながらも、のんびりとした雰囲気が漂います。途中駅は典型的なローカル駅でしたが、コンクリートがきちんと敷いてあり、整備されている印象を受けました。
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ところで、リトアニアの普通切符はレシートになっています。検察の際は、車掌がスーパーのバーコード機を当てる要領で切符をチェックします。人口が少ない分、合理化が徹底されている印象を受けました。
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電車は約2時間かけて1分の遅れもなく、静かにカウナス駅に到着しました。カウナスから先はポーランドにつながっています。カウナスはリトアニア第二の都市なので、多くの乗客が中心地に向かって歩いて行きました。
あちらこちらにある杉原千畝の足跡
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ここで簡単に杉原千畝がユダヤ人にビザを発行した背景を説明しておきましょう。1930年代、リトアニアはカウナスに臨時首都を置く独立国でした。1930年代末、ナチスドイツはポーランドに侵攻。ポーランドに居住していた多くのユダヤ人がリトアニアに避難しました。ユダヤ人は杉原千畝がいる日本領事館に押し寄せ、日本の通過ビザ発行を懇願したのです。彼らは日本の通過ビザを取得し、シベリア鉄道、日本を経由してアメリカに亡命しようとしました。杉原千畝は日本政府の命令を無視する形で、ユダヤ人に通過ビザを発行。その結果、6000人以上のユダヤ人が日本の通過ビザを持って、第三国に渡ったとされています。
一度は訪れて欲しいスギハラハウス(杉原記念館)
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また、松岡外務大臣(当時)から杉原千畝に当てた電報も展示されています。残念ながら、杉原千畝が発行したビザの現物は杉原記念館にはありません。それでも、杉原千畝の渾身の勇気を感じることができました。
リトアニア鉄道ガイド
リトアニアの鉄道は比較的整備が進んでおり快適です。駅の表示もしっかりしているので、初めて利用する方でも安心して使えます。ヴィリニュス~カウナス間は1時間に1~2本、所要時間は90分~120分です。国際列車はロシア、ベラルーシ、ポーランド間で走っていますが、ベラルーシ、ポーランド間は普通列車のみの運行です。また、ヴィリニュスからラトビアのリーガへはバスを使いましょう。
ライター:新田浩之