1970年の発売以降、現在まで続くベストセラー! 生野菜嫌いでも好きになる!?
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名称:「八ヶ岳名物 高原野菜とカツの弁当」
価格:1,000円(税込)
販売駅:中央本線 小淵沢駅
入手場所:京王百貨店新宿店の駅弁大会による実演販売
販売元:株式会社 丸政
項目 内容
ジャンル: 野菜系 味の濃さ: 薄ー◆ーーー濃 甘辛度: 甘ーー◆ーー辛 全体量: 少ーーー◆ー多 飽きにくさ: 飽ーーーー◆良 コスパ: 悪ーーーー◆良 -
1970年の発売以降、現在まで変わらずに愛され続けている、この駅弁は2011年まではJR新宿駅でも販売していたというが、現在は中央本線の小淵沢駅でのみ販売されている。
パッケージは紙製で環境にやさしい。パッケージ上面に記載された「おかげさまで丸政創業100年」というキャッチには、長い歴史に裏付けされた安心感がある。弁当名のフォントもイラストレータが手書きしたような味わいがありマニア心をくすぐる。「カツ」とあるが“とんかつ”ではなく“チキンカツ”である。メインイラストの八ヶ岳が何ともいい味を醸し出している。深々とした緑に青い空は、まさに誰もが思い描く「ザ・八ヶ岳」だ。
では、さっそく外観からみていこう。
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パッケージ向こう正面は英字表記、手前側は日本語表記である。
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左側面と右側面は日本語表記になっている。
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重さは684g、横幅は24cmと程よいサイズ感だ。
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奥行は15.5cm、高さは4cm。とてもいい。
では、開けてみよう
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ソース一式セット。ビニールチャック付きの袋内には、紙ナプキンまでセットされている。「味なお塩」「ウスターソース」「キューピーレインボードレッシング」「マスタード」が入っている。ソース類をかけたあとは、ゴミ類をビニールチャックに封入することでソース類の飛び散り等を防ぎシンプルにまとめられるという配慮が素晴らしい。
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箸袋は紙製で、中には箸とつまようじが入っている。箸の長さは20cmで手が大きな方でもそれなりに使いやすい。妙な割れ方やササクレが出にくい箸である点も良い。
では、食材をみていこう
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まずは、白米だ。全体写真でみると飯の量が少な目に感じるが、実測値で258gほどあり十分な量である。お茶碗の中~大サイズで1膳半ぐらいの量だ。
炊き加減も絶妙で米の質も良い。冷や飯ながらも噛むたびに甘味を感じられる。飯に添付の塩を少量かけると塩にぎりのような素朴な味わいを楽しむことができる。この食べ方はおすすめだ。
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そして「チキンカツ」だ。5cm四方程度の大きさのものが3枚入っており107gほどだ。断面カット写真のとおり、肉厚も十分で衣と肉のバランスも良い。パン粉は細目を使っており優しい仕上がりだ。特質すべきなのは、時間が経過しても衣がドロドロにはなっていないことだ。ソースをかけない部分についてはカリカリ感すら残っている。そっと噛むと口の中に鶏肉本来の香りや旨味が広がり、肉々さとジューシーさを堪能することができる。
最初に3枚のチキンカツにソースをドバっとかけるのではなく、1枚目は塩で食し、シンプルに鶏の旨味を楽しんでもらいたい。2枚目はウスターソースをかけて食そう。この「ウスターソース」が絶品だ。甘さ控えめで辛めの味付け。このソースはチキンカツとの相性が極めてよい。3枚目は好みに応じて。その際マスタード少量をつけて、鼻から抜けるマスタードの心地よい香りを楽しんでもらいたい。
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チキンカツの横にバランで仕切り、盛り付けられている「スパゲッティ」。ケチャップとブイヨンで味付けされているようだ。付け合わせ的なものなので全体的に味は控えめの仕上がりだ。麺自体のコシはわずかに感じられる茹で加減である。
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スパゲッティ横でフィルムケースに収まっている付け合わせの「茎さつま」。耳慣れない名前だが、サツマイモの茎だそうだ。かつお出汁で炊いてある。口に含むとジュワっと出汁が流れ出て、唐辛子の僅かな辛さとほどよい甘みを感じる。箸休めにちょうどよい。
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シャキ、シャキっとした歯触りでいつまでも咀嚼していたくなる香味野菜の王者「セロリ」。生で食すセロリの香りは強烈だ。しかし、この青臭さこそがセロリの真骨頂である。パクチーなどの香味野菜同様に苦手な方も多いだろう。しかし、この弁当に入っているセロリは、青臭さよりも甘味が立つタイプだ。ソース類をかけずに是非そのまま味わってもらいたい。
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「山ごぼう」の醤油漬け。ポリポリとした歯ごたえは実に心地よい。口の中いっぱいに大地の香りが広がり、目の前に八ヶ岳の情景が浮かぶ。塩味と甘味がほどよく感じられ、飯とよく合う。最初に飯の上に移動し、箸休めとして少しずつかじると何とも良い飯の友になる。
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「きゅうり」。時間が経過していてもなお、パリパリとしており新鮮さを失わない。きゅうりの持つ瓜臭さは少なめであり、苦手な方でも美味しく食せるだろう。種部分が多い品種なので口あたりも柔らかく、瑞々しさを一層引き上げている。
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「プチトマト」。一般的なスーパーで入手できるプチトマトは皮がこわく、青臭いものが多い。この青臭さが苦手な方が多いと思うが、この駅弁に入っているプチトマトは全く違う。青臭さが殆どなく、フルーツの甘みが圧倒的に勝っている。また、皮がとても柔らかく、食べた後、口に一切残らないのが秀逸だ。
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「レタス」。写真をみてのとおり、これだけ入っている。その量は50gほどだ。新鮮なレタスならではのパリッとした感じが十分に残っており、口に入れて噛むとシャキシャキという音が近くにいる人に聞こえるような新鮮さである。同種の弁当にありがちなレタス一番外の葉色が濃い部分(味が悪い)を省いているところにも好感が持てる。
「ドレッシング」は、キューピーのレインボードレッシング。業務用に販売しているもので酸味は極僅かでありクリーミーな味わい。サウザンドアイランド風な仕上がりで生野菜にベストマッチだ。
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「りんご」。これはさすがと言わざるを得ない。シャリシャリとした歯触りでとても新鮮。色の変化もなく、見た目も素晴らしい。とても上品な甘さで一口食べると止まらない。最初に食べるか、あとで食べるかは好みによると思うが、筆者のおススメは最初にフィルムを剥がしたら、りんごをその上に移動し、ドレッシングや塩がかからないようにする。そして最後にデザートとして召し上がることを推奨したい。
総評
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歴史あるお弁当。その名のとおり「カツ」よりも「野菜」をメインとしたネーミングが野菜のクオリティに対する自信の表れだろう。
このお弁当を一度でも食べたことがある方は、迷わず手に取ってしまうはずだ。日本全国の駅弁、数あれど、これほど生野菜が豊富で、しかも新鮮さや旨さを味わえるものは恐らく見つからないのではなかろうか。日常、あまり生野菜を食べない方でも生野菜の魅力に取りつかれそうになるほどである。野菜総量で160g弱と一日の摂取目標の約半分を摂ることができるというのは何とも素晴らしい。
そして、チキンカツは絶品だ。カラリと揚がっており、油くどさのみじんもない。これなら、フライ系が苦手な方でも胃もたれはしないはずだ。
この弁当。塩、マスタード、ウスターソース、ドレッシングとソース類が多いが、一口目は、それぞれの食材に何もかけずに味わってみてほしい。そのクオリティに驚くことになるだろう。その後は、好みに応じて多彩なソースをチョイスし、自分だけのオリジナルを見つけてほしい。
底面積もそこそこあり、多彩なソースをかける手間がかかるため、片手に持って食べるスタイルではなくテーブルに置き、じっくり構えて味わう弁当である。
一見、平凡でどこにでもありそうなお弁当に見えるが、食べれば誰もがその違いに驚くだろう。わざわざ遠征してまで食べたい“名弁当”だ。
■ズバリ!このお弁当は買いなのか?
定価1,000円のコストに十分見合う質と量で生野菜が嫌いでなければ即買いすべき。
■こんな人にオススメ
揚げ物好き、生野菜が好き、白飯が好き、バランスの良い食事がしたい人